最近の記事

グローバル・シーは official-site.infoを発行しています。

officialsite_logo.png

見える化を支援します。BEMS、エネルギーコスト削減ならインスター・イッツ・ジャパンにご相談ください

2024年10月28日

ベリリウム


特徴

ベリリウムは緑柱石などの鉱物から産出される。緑柱石は不純物に由来する色の違いによってアクアマリンエメラルドなどと呼ばれ、宝石としても用いられる。常温常圧で安定した結晶構造六方最密充填構造(HCP)である。単体は銀白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在できる。モース硬度は6から7を示し、硬く、常温では脆いが、高温になると展延性が増す。にもアルカリにも溶解する。ベリリウムの安定同位体は恒星の元素合成においては生成されず、宇宙線による核破砕によって炭素窒素などより重い元素から生成される。

ベリリウムは周期表の上では第2族元素に属しているが、その性質は同じ族の元素であるカルシウムストロンチウムよりもむしろ第13族元素であるアルミニウムに類似している[11]。たとえば、カルシウムやストロンチウムは炎色反応によって発色するが、ベリリウムは無色である[12]。そのため、ベリリウムは第2族元素ではあるが、アルカリ土類金属には含めないこともある[13]。また、ベリリウムの二元化合物の構造は亜鉛とも類似している[14]

物理的性質

ベリリウムの同素体は2つあり、常温、常圧(標準状態)における安定した結晶構造六方最密充填構造(HCP)であり、その格子定数はa=226.8 pm、b=359.4 pmである[15]。高温になると、体心立方格子の結晶構造が最も安定となる。モース硬度6から7[16]と第2族元素の中でもっとも硬いが、粉砕によって粉末にできるほど脆い[17]。しかしながら、高温になると展延性が増すため[18]核融合炉のような高温条件で利用する用途において高い機械的性質を発揮することができる[19]。この用途では、400 °Cを下回る温度になると使用上問題となるレベルにまで展延性が低下してしまう[19]。比重は1.816、融点は1284 °C、沸点は2767 °Cである[17]

ベリリウムのヤング率は287 GPaとのヤング率より50 %も高く[20]、非常に強い曲げ強さを有している。このような高いヤング率に由来してベリリウムの剛性は非常に優れており、後述の熱負荷の大きい環境における安定性も相まって宇宙船航空機などの構造部材に利用されている。また、このヤング率の大きさと、ベリリウムが比較的低密度であるという物性が組み合わさることにより、周囲の状況に応じて変化するものの、およそ12.9 km/sという著しく高い音の伝導性を示す。この性質を利用して音響材料におけるスピーカーの振動板などに用いられている。ベリリウムの他の重要な特性としては、1925 J/(kg・K)という高い比熱および、216 W/(m・K)という高い熱伝導率が挙げられ、これらの物性によってベリリウムは単位重量当たりの放熱物性にもっとも優れた金属である。この放熱物性を利用した用途としてヒートシンク材料が挙げられ、電子材料などにおいて活用されている。またこれらの物性は、11.4×10−6 K−1という比較的低い線形熱膨張率や1284 °Cという高い融点も相まって、熱負荷の大きな状況下における非常に高い安定性をもたらしている[10]

化学的性質

ベリリウムの単体還元性が非常に強く、その標準酸化還元電位E0は −1.85 Vである[21]。この標準電位の値はイオン化傾向においてアルミニウムの上に位置しているため大きな化学活性が期待されるが、実際には表面が酸化物の膜(酸化被膜)に覆われて不動態化するため高温に熱した状態でさえも空気や水と反応しない。しかしながら、いったん点火すれば輝きながら燃焼して酸化ベリリウム窒化ベリリウムの混合物が形成される[22]

ベリリウムは通常、表面に酸化被膜を形成しているために対しての強い耐性を示すが、酸化被膜を取り除いた純粋なベリリウムでは、塩酸や希硫酸のような酸化力を持たない酸に対しては容易に溶解する。硝酸のような酸化力を有する酸に対してはゆっくりとしか溶解しない。また、強アルカリに対してはオキソ酸イオンであるベリリウム酸イオン(Be(OH)42−)を形成して水素ガスを発生させながら溶解する。このような酸やアルカリに対する性質はアルミニウムと類似している[23]。ベリリウムは水とも水素を発生させながら反応するが、水との反応によって生じる水酸化ベリリウムは水に対する溶解度が低く金属表面に被膜を形成するため、金属表面のベリリウムが反応しきればそれ以上反応は進行しない[24]

ベリリウムの電子殻

ベリリウム原子電子配置は[He]2s2である。ベリリウムはその原子半径の小ささに対してイオン化エネルギーが大きいため電荷を完全に分離することは難しく、そのためベリリウムの化合物は共有結合性を有している[25]。また、ベリリウムの高い正の電荷密度からも共有結合性を説明できる。ファヤンスの法則によると、イオン結合で、サイズが小さく高い正の電荷を持つ陽イオンは、陰イオンの最外殻電子を引っ張り、(これを分極という。)共有結合性を生じる。ベリリウムイオンはサイズが小さく2+と電荷も高いため、共有結合性を有する[8]第2周期元素は原子量が大きくなるにしたがってイオン化エネルギーも増大する法則が見られるが、ベリリウムはその法則から外れており、より原子量の大きなホウ素よりもイオン化エネルギーが大きい。これは、ベリリウムの最外殻電子が2s軌道上にあり、ホウ素の最外殻電子は2p軌道上にあることに起因している。2p軌道の電子は内殻に存在するs軌道の電子によって遮蔽効果有効核電荷も参照)を受けるため、2p軌道に存在する最外殻電子のイオン化エネルギーが低下する。一方で2s軌道の電子は遮蔽効果を受けないため、相対的に2p軌道の電子よりもイオン化エネルギーが大きくなり、これによってベリリウムとホウ素の間でイオン化エネルギーの大きさの逆転が生じる[26]

ベリリウムの錯体もしくは錯イオンは、たとえばテトラアクアベリリウム(II)イオン(Be[(H2O)4]2+)やテトラハロベリリウム酸イオン(BeX42−)のように、多くの場合4配位を取る[25]EDTAはほかの配位子よりも優先してベリリウムに配位して八面体形の錯体を形成するため、分析技術にこの性質が利用される。たとえば、ベリリウムのアセチルアセトナト錯体にEDTAを加えると、EDTAがアセチルアセトンよりも優先してベリリウムとの間で錯体を形成してアセチルアセトンが分離するため、ベリリウムを溶媒抽出することができる。このようなEDTAを用いた錯体形成においてはAl3+のようなほかの陽イオンによって悪影響を受けることがある[27]


核的性質

ベリリウムは、高エネルギーな中性子線に対して広い散乱断面積を有しており、その散乱断面積は0.01 eVを上回るものに対しておよそ6バーンである。散乱断面積の正確な値はベリリウムの結晶サイズや純度に強く依存するため実際の散乱断面積は1桁ほど低くなり、ベリリウムが効果的に減速させることのできる中性子線のエネルギー範囲0.03 eV 以上のものに限られる。このため、ベリリウムは高エネルギーな熱中性子は効果的に減速させることができるものの、エネルギーの低い冷中性子は減速させることができずに透過してしまう。この性質を利用して、さまざまなエネルギーを持つ中性子の中から冷中性子のみを取り出すためのフィルターとして利用される[31]

ベリリウムのおもな同位体である9Beは(n, 2n)中性子反応によって1つの中性子を消費して2つの中性子を放出し、2つのアルファ粒子に分裂する。したがって、ベリリウムの中性子反応は消費する中性子よりも多くの中性子を放出して系内の中性子を増加させる。

金属としてのベリリウムは大部分のX線およびガンマ線を透過するため、X線管などのX線装置におけるX線の出力窓として有用である。ベリリウムはまた、ベリリウムの原子核と高速のアルファ粒子との衝突によって中性子線を放出するため、実験における比較的少数の中性子線を得るための良好な中性子線源である[10]

工業規模でのベリリウム産出に関与しているのはアメリカ、中国、カザフスタンの3国のみである[75]。2008年時点のアメリカにおけるベリリウムおよびベリリウム化合物のおもな生産者は、ブラッシュ・エンジニアード・マテリアルズ社である[76]。ブラッシュ・エンジニアード・マテリアルズ社では、ベリリウムを製錬するための原料の大部分を自身が所有するスポール山の鉱床(ユタ州)から産出されるベリリウム鉱石(ベルトラン石を含む)から得ている。ベリリウムの製錬およびほかの精製は、ユタ州デルタ英語版の北10マイルにある工場で行われており[77]、その場所はインターマウンテン・パワー・プロジェクトによる発電設備から近くかつ町からも離れているために選ばれた[78]。1998年から2008年までの間、ベリリウムの世界の生産量は343トンからおよそ200トンにまで減少しており、200トンのうち176トン(88 %)はアメリカで生産されている[79][80]。真空鋳造によって製造されたベリリウムインゴットの2001年におけるアメリカ市場でのキログラム単価は745ドルであった[81]

爆発性

ベリリウムは酸化被膜のために反応性に乏しい金属であるが、一度着火すると燃焼しやすい性質であるため、空気中にベリリウムの粉塵が存在している状態では粉塵爆発が起こる危険性がある[124]
【関連する記事】
posted by Mark at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 核融合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック